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星座に関する色々なメモ
No.
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No.28
2009/10/30 (Fri) 23:46:41


霜も降りていないうちから、右手にシモヤケができてしまいました。
これ、春まで治らないんだよ…

それはともかく、これで9人。あと3人。まにあうかな?

『いち、にい、さん、しい…』

もう5回も数えているけれど、目の前の現実を信じ難くて、てんびんはもう一度だけ“ほし”の数を数えました。
ほしのこ達は、空と地上を行き来できる“ほし”の乗り方を習って知っています。
でも、それに乗っていいのは特別な時だけで、勝手に空から降りることは禁じられていました。
なのに、地上への出入り口に並ぶ“ほし”の数は、今朝より一個、どうしても少ないのでした。

てんびんは、とりあえず前向きな理由を考えてみました。

『えーと… 何か地上へ行く用事でもあったのかな? 長老のおつかいとか…』
『そんなわけないよ』

てんびんの後ろで、同じく呆然と“ほし”を数えていたさそりは、いち早く頭を切り替えて言いました。

『ぼくは、ついさっき、長老にごあいさつに行ったのだもの。
 いて達に何か用事をいいつけたのなら、ぼくにだって教えてくれるはずだよ』

さそりは、この時期、夜空の管理を任されていました。
ほしのこ達の仕事は、星達の動きを指揮すること。
なにしろ星達はとっても個性的で、油断してると好き勝手に飛んで行くやつもいるのです。
逆に、じっとして動かない星や、地上へ飛びこんで行く星もあります。
それを叱ったり、宥めたりしながら正しいコースへ導くのは、ほしのこ達にしかできない仕事でした。
これは、6人兄弟のほしのこが、一つのチームになって行います。
一ヶ月、一人がリーダーとなって、他の5人がその手伝いをするのです。
半年で全員の順番が巡ったら、次のチームに仕事を譲って、残りの半年はお休みです。

てんびんは、今月、自分の順番を終えたばかりでした。
さそりに空を任せて、少しホッとしたところに、“ほし”が消えるという事件が発生。
でも、てんびん達には、すでに犯人の見当がついていました。
というより、人を探していたら、たまたま“ほし”の無いことに気付いたのです。
探していた人物が“ほし”を使ったと考えるのは、とても自然な推理でした。

『ぜったい、いてがやったにちがいないよ』

確信に満ちた声で、さそりが言いました。

『うん、そうだね』

てんびんは同意して頷きましたが、少し考えて、『でも、もしかしたら、みずがめかもしれないけど』と、付け加えました。
今度はさそりが頷きました。

『どっちにしろ、うおは二人についていったんだろうね』

いて、みずがめ、うおの三人は、てんびんとさそりの弟達です。
悪い子では無いのですが、興味が先に立つと何をするかわからない困ったところがありました。
てんびんは年少の三人が楽しげに“ほし”に乗り込む姿を想像して、頭が痛くなりました。
そして、もう一つ、頭痛の原因が背中にくっついているのでした。

『ぼく、起きたら、み…みんな、いなくなってて。ぼく…おいてかれちゃった…!』

しゃくりあげながら、やぎが涙声で言いました。
やぎも弟の一人です。
どうやら、いて達が出掛ける時にお昼寝してたせいで置いて行かれたらしいのです。
幼いながら、真面目でしっかり者の彼ですが、目を覚ました時に誰もいなかったのが随分と寂しかったらしく、さっきから、てんびんとさそりの服の端を握って離しません。
消えた弟達を探して歩く間も、ずっとやぎがついて回るものですから、てんびんもさそりも動きにくくて仕方ありませんでした。
でも、仲間外れになって泣いている弟を、また一人ぼっちにはできません。
それに、いつも6人一緒だったのが急に半分になってしまって、てんびんとさそりも不安な気持ちでいっぱいでした。
それで結局、三人連れ立って“ほし”置き場までやってきたのでした。

しかし、事が空の下に関わるとなると、三人一緒というわけにもいきません。
てんびんは、ようやく落ち着いてきたもののまだ涙目のやぎと、それからさそりの顔を交互に見ながら言いました。

『いて達は地上に降りてしまったみたいだ。ぼくは、ちょっと探しに行ってくるよ』

それを聞いて、やぎが慌てた様子で『ぼくも行く!』と叫びました。

『駄目だよ。もしも皆が見つからなかったら、今日の夜空はどうなるの?
 さそり一人じゃ大変でしょう? やぎは残って手伝ってくれなくちゃ』
『でも…』
『だいじょうぶ。夜になる前に戻ってくるから』

そう言って、てんびんは“ほし”の一つに乗り込みました。
太陽はすでに西へ傾き始めています。あまり時間はありません。
本当は長老に許可を貰わなくては“ほし”を使うことはできないのですが、今は緊急事態です。
てんびんの乗った”ほし”は、すぐさま光る尾をひいて飛び立ちました。
そして、あっというまに雲の下へと見えなくなってしまいました。

てんびんを見送った二人のほしのこは、しばらくの間じっと下界の方を見つめていました。
やぎは口を固く結んで泣きそうなのを我慢しています。
そんな弟の頭を、さそりは優しくなでてあげました。

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