隔離のジェミニオンとか。エピソード羅列系。
で、12スレ目>>641-643の、ほしのこネタで一つ。
ちょうどハロウィンの季節ですし。
あくまでも断片なので、きちんと完結するような話ではないです。
それでも良ければ読んでみてください。なんとなく童話風。
それは、ハロウィンの日のこと。
お化けに仮装した子供達が家々を行き交い、お菓子の甘い匂いが漂う夜。
双子は主催者として街の中央ホールで開かれるパーティに出席していました。
ここは、大人達の社交の場。
市長さんの一家をはじめ、街の有力者も大勢来ています。
何か失礼なことがあっては一大事。
双子は会場内を飛び回り、料理や備品の不備が無いか確認したり、
お客様一人一人に挨拶をしたり、余興の音楽家達に指示を出したりしていました。
そうやって目が回るような忙しさが、ようやく一段落着いた頃。
双子は会場の外に出て、少しの間休憩をしていました。
澄みきった秋の空。星がとてもきれいです。
双子は疲れた体を思い切り伸ばして、新鮮な空気を胸いっぱい吸い込みました。
その時です。
ぴかっと、頭上で何かが光りました。
星々のささやかな輝きとは違う、とても大きな光です。
驚いて見上げると、そこには見たこともない大きな星があって、
今まさに尾を引いて落ちてゆくところでした。
――流れ星… 彗星… いや、もしかして、隕石?
双子が目を見張っているうちに、その大きな星は街外れの丘の向こうへ落ちて行きました。
そして、見えなくなった瞬間に、地面の揺れが双子の足下に伝わってきました。
きっと、あの星が落ちた衝撃に違いありません。
そう考えた双子は、居ても立ってもいられなくなりました。
これは、大事件です。
もしも隕石が落ちてきたのなら、この小さな街にとって大きな財産になるかもしれません。
隕石を見たい観光客や、調べたい学者達が集まってくれば、
街のお店や宿泊施設に人がいっぱいになって、きっと活気づくことでしょう。
双子は、この街で生まれ育ち、この街の良い所をよく知っていました。
でも、年々人の数は減り、街は少しずつ寂しくなっていきます。
双子は賑やかで楽しいことが大好きでした。
だから、街を明るくする為に、たくさんの愉快なイベントを考えては実行してきました。
けれども、どんなお祭りも、本当に街を元気にすることはできませんでした。
――だけど、どこにも無いような街の宝ができれば、きっと…!
双子は大きな期待と、持ち前の好奇心がうずいてなりません。
すぐにでも星が消えた丘の向こうへと走り出したくなりました。
しかし、今はまだパーティの途中です。
まだまだ双子には大事な役割が残っていました。
それを放って出掛けることなどできません。
双子は、名残惜しく星の落ちた辺りを見つめ、つまらなそうに舌打ちしました。
――仕方ない。ここが片付くまではお預けか。
双子は振り返って、パーティ会場へと歩き出しました。
すると、ホールの入り口付近に、二つの人影が見えました。
双子には、彼らに見覚えがありました。
パーティが始まって間もなく、互いに挨拶をしたからです。
それは、街の名物である天文台の所長と若い職員でした。
そう気付いた途端、双子はひらめきました。
あの星が落ちた方向、森に囲まれた丘の上には、天文台があるのです。
これは、ちょうどいい偶然でした。
天文台で働く人なら、当然、星のことには詳しいし、興味もあるでしょう。
あの星のことを話せば、きっとすぐに調べに行ってくれるに違いありません。
双子はにっこり笑顔になって、二人の側へと駆け寄って行きました。